新刊紹介
2025.9.16
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未来創造 食品開発-新しくなる素材から生産までー 山崎康夫 |
A5版,142頁 2025年7月10日発行 ISBN 978-4-7821-0493-4 定価 本体3,300円+税 発行所 株式会社 幸書房 (〒101-0051 東京都千代田区神保町2-7) |
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人口減少が進む日本国内の市場縮小は,食品産業が直面せざるを得ない現実です.高齢化社会が進む中,将来どのような食品が望まれるのか,また食をめぐる環境は気候変動による収量の不安定化や高騰など,これまでにない対応を考慮せざるを得ない状況になっています.本書は,食をめぐる大きな環境変化に対応しながら,これまでにない新しい発想で,未来創造型食品開発のシーズを探った,マーケティングや食品開発についてのインタビュー集です. 本書は6章で構成され,第1章~4章は未来創造に向けた最も特徴のある,相応しい企業事例を厳選して食品関連企業へのインタビューをまとめたものです. 第1章では「新素材の食品開発」として,木の酒,焙煎ごぼう,ゲノム編集食品や奇跡の藻など今までにない新素材を開発した事例です.第2章では「新代替素材の食品開発」として,ベジタリアンや宗教上の理由で肉食制限のある方のための植物性たんぱく食品,こんにゃくから加工したミルク,卵を使わないスクランブルエッグやマヨネーズなどを開発した事例です.第3章では「新生産方式の食品開発」として,ノンアルコールビールで「酵母」を使わない製法,液体を泡に変換するエスプーマ技術や食の美観を得るための新加工方法などを開発した事例です.第4 章では「新用途•海外展開に向けた食品開発」として,ニーズを捉えた新しい介護食の開発,「寒天」を活用して調理時に溶かすことによる消費者への付加価値提供や現地ニーズに沿った「液みそ」や「みそ汁サーバー」の開発の事例です.第5章は「食品開発イノベーションの手法」について,食品企業のイノベーション創生モデル,地方特産品としての魅力をレベルアップするための食品開発,効果的なターゲットの絞り込み,新商品開発へのデザイン思考の導入や加工食品の輸出に際し必要となる対応を提示しています.第6章では,「食品開発に必要な会社組織とは」として,食品開発事例における暗黙知と形式知の分析による食品開発の持続的イノベーションの進展について述べています. 食品開発は,食品会社にとっては至上命題といってもよいものです.アクティブシニア向けの健康食品から共働きが当たり前の30~50代家庭,そしてフードロスや環境配慮に敏感といわれる「Z世代」にも受け入れられるような,美味しく,楽しく,健康的で,かつ共感を呼ぶ,新しい食品について写真等を活用して解説しており,学生や食品事業者のみならず一般の読者まで理解しやすい内容になっています. (H.O) |
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2025.8.6
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米飯変敗の科学 内藤 茂三 |
A5版,520頁 2025年3月15日発行 ISBN 978-4-7679-6228-3 C3047 定価 本体8,500円+税 発行所 建帛社 (〒112-0011 東京都文京区千石4丁目2-15) |
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米飯は,日本人の食生活において古くから主食として親しまれてきた食品であり,日々の食卓に欠かせない存在です.近年では,米飯はレトルト,冷凍,無菌包装,チルド,缶詰など,さまざまな形態に加工されて流通するようになりました.これらの加工米飯は,利便性や保存性に優れ,家庭だけでなく中食・外食産業でも広く活用されています.しかし,米飯は水分活性が高く,微生物の繁殖に適した環境を持つ食品でもあります.そのため,加工・保存・流通の各工程において,微生物による変敗を防ぐための工夫と対策が求められます. 本書は以下の構成となっています. 1. 寿司の微生物変敗と制御 本書では,多様な加工・調理における米飯の変敗について,詳細に解説しています.その対象は,寿司,混ぜ飯,炊き込み飯,炒飯,おにぎり,粥,雑炊,赤飯,おこわ,丼物,米飯弁当,レトルト米飯,無菌包装米飯,チルド米飯,冷凍米飯など,多岐に渡ります.それぞれの製品特性や製造工程,使用される具材,保存条件などに応じた微生物の挙動と変敗のメカニズムが丁寧に分析されています.また,単なる理論的な説明にとどまらず,現場での衛生管理や品質保持に直結する具体的な内容が紹介されています.温度管理,包装技術,製造工程の衛生対策など,微生物制御に必要な要素が網羅的に取り上げられており,米飯の安全性と品質を高めるための実践的な指針となるでしょう. また,本書は食品科学の専門的な視点だけでなく,日本各地に根付く米飯文化にも触れており,食文化の知識を深める一助にもなります.米飯という身近な食品を通じて,微生物学,食品衛生,文化的背景といった様々な視点から学びを得ることが可能であり,本書の大きな魅力のひとつです. 食品の製造業者,流通業者,研究者,教育関係者,そして食品の品質,安全性に関心を持つ一般の読者にとって,本書は信頼できる知識の源となります.日々の業務や学びに役立つ一冊として,ぜひ手に取っていただきたい内容となっています. (D.N.) |
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2025.8.5
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応用微生物学 中西載慶 編 |
A5版,319頁 2025年5月27日発行 ISBN 978-4-06-535646-3 定価 本体3,800円+税 発行所 株式会社講談社 (〒112-8001 東京都文京区音羽2-12-21) |
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本書は,微生物の多様な能力を人間生活や環境保全に活用する「応用微生物学」について,基礎から応用までを体系的に解説した教科書・参考書である.微生物学はビール醸造研究に始まり,医学,農学など多岐にわたる分野へと発展しており,本書ではその応用分野の全体像が初学者にも分かりやすく示されている.本書の構成は体系的な習得を促すよう熟慮されている.序論から始まり,前半の第2〜6章で微生物の分類・代謝・遺伝といった基礎を固める.後半の第7〜10章では発酵食品,有用物質生産,食品衛生,環境保全といった応用的内容を展開する.この基礎から応用への流れは,読者の一貫した学問体系の理解を助けるであろう.近年,応用微生物学の領域は高度化・細分化しているが,大学教育では講義時間が制約され,体系的な学習が困難な状況にある.そのため学生には自学自習による知識の補完が不可欠となっている.本書はこうした現状に応えるべく企画され,講義を補完し,学生の主体的な学びを支える羅針盤となる一冊である. (N.N) |
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2025.7.24
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「食品・医薬分野のMALDI-TOF MS微生物検査・同定― その基礎と利用―」 中山素一 編 |
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本書は,食品の品質管理の現場で微生物同定を迅速に正確に行うためのツールとしてMALDI-TOF MS(マトリクス支援飛行時間型質量分析法)を活用するための取組がまとめられた技術書です. MALDI-TOFMSは,1985年に島津製作所の田中耕一氏がタンパク質を測定できることを報告,それによりノーベル化学賞を受賞されたことと関連して日本でも広く知られる技術となりました.その後,質量分析は分子量1,000程度までの精製した化合物の分子量を測定する手法から,大きな分子や混合物も対象とする手法へと変わってゆきます。そのような中で、微生物がもつ多数のタンパク質の質量を「指紋」として利用することで、微生物を特徴づけることが提案され,その技術がここでご紹介するMALDI-TOF MSによる微生物検査・同定に繋がっています. 本書は,微生物含有検体を目の前にしてから同定に至るまでの手順が具体的に示されており,微生物やMALDI-TOFMSを扱った経験がなくても,すぐに検査に取り掛かれそうに感じてしまうほどです.しかし,そう簡単に同定が成功するものではないことも,本書から学び取れます.検体中の微生物を何℃で何日培養するのがよいか,既存の抽出法はどのような食品に適用できるか,既成のデータベースに対象微生物が収載されていない場合はどうするか、装置や試験者が異なっても同等の結果が得られるか等、様々な視点で検討が行われたことが窺えます.本書には,読者の品質管理業務のヒントとなる,一歩先ゆく同業技術者の試行錯誤の過程と結果が詰まっています. 「相手」が複雑な混合物である食品+耐熱性の高いものから低温で増殖しやすいものまで多様な性質をもつ多種の微生物であるため,これまで免疫学的方法,分子生物学的方法もさまざまなものが開発されてきました.それらと比較しても,迅速性という観点ではMALDI-TOFMSに軍配が上がると本書を読んで感じました.装置の初期導入コストの高さやデータベース収載の食品微生物数の少なさといった課題はありますが,それらは,本書を活用して食品分野で微生物検査・同定にMALDI-TOFMSを使用する現場が増えることで,解決に向かうかもしれません.本書が品質管理の現場に行き渡り,微生物検査・同定が少し楽になることを期待します. (M.K) |
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2025.1.17
| 食品の組織構造とおいしさ 監修:峯木眞知子 編集:中村卓,小竹佐知子 |
B5版,並製,246頁(カラー) |
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20世紀から21世紀に移り替わる頃から,世界では,ナノテクが大きな関心を集め始めました.食品関係の研究者も,微細構造と機能発現の解明を対象とする食品微細科学技術システムの構築を目指して,食品科学や分析科学,界面科学,物理化学,高分子化学などに基づく理学的アプローチ,さらに微粉砕,乳化,分離,反応,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの技術を用いた工学的アプローチを推進するため,異分野交流の場としての研究会などを組織して活動を続けています。そうした活動の中で,頻繁に問題となることは,分析技術が発達して,食品の微細構造が観察できるようにはなってはきたものの,その観察結果をどのように解釈すればよいのかが,あいまいとなっているということではないでしょうか?すなわち,微細構造と食品の機能(特に「おいしさ」)との関係を解明する上で参考となる資料が不足していました. こうした中にあって,本書は,食品別に微細構造の観察方法を解説することに加え,得られた観察データの解析方法を系統的に紹介し,おいしさを視覚的にとらえ,効果的な理解へと導く構成となっていて,食品の微細科学に関わる研究者にとって構造観察の情報をおいしさと関連づけるための貴重な指針を与える良書です.また,執筆者も,それぞれの分野における第一線の研究者,技術者が名を連ねています.監修そして編集に当たられた先生方の企画力には,目を張るものがあります. 本書が,食品の組織構造とおいしさの解析に関わる人たちの活動の指針となり,豊かな食生活の実現に貢献することを期待します. (H.N) |
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2024.10.7 新スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学 第3版 宮本敬久編
2024.7.19 クッカリーサイエンス012 おいしいたまごのはなし 日本調理科学会 監修 峯木眞知子・小泉昌子・設樂弘之 共著
2024.5.28 フードビジネスで活躍するAI 山崎康夫
2024.5.24 持続可能な社会と人の暮らし 持続可能な生活研究会
2024.4.8 豆類の百科事典 国分牧衛・石本政男・村本光二・加藤淳・谷口亜樹子〔編〕
2024.1.11 食育の百科事典 日本食育学会編
2024.1.9 ポリフェノールの科学 基礎化学から健康機能まで 寺尾 純二、下位 香代子 [監修]
2023.6.1 生食のはなし―リスクを知って、おいしく食べる―
2023.4.7 HACCPを支える食品微生物の自主検査 戸ヶ崎 惠一著
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