会長挨拶

 

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会長 松井 利郎(九州大学)

   MATSUI Toshiro
   

 

 この度、高野克己先生のあとを受け、会長に就任しました。これまでの歴代会長ならびに役員の先生方が築いてこられた食品科学工学分野および産業分野への多大な功績を岩盤に、学術価値を共有でき、発信できる団体としてさらに発展するよう努力していく所存ですので、会員各位のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。

来年(2023年)に本学会は創立70年の節目を迎えます。1953年(昭和28年)に農産加工技術研究会として発足して以来、日本食品工業学会(1962年)、社団法人日本食品工業学会(1984年)、社団法人日本食品科学工学会(1994年)へと名称等の発展的変遷を踏まえて、2014年(平成26年)に公益社団法人日本食品科学工学会となり、現在では食品に関する学術活動の主幹団体となったことは会員各位におかれましても同慶の至りと考えます。その一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは普段の生活体系が不断ではなかったことを痛感し、ニューノーマルとは何かを考える契機となったことは否めません。本学会を含めて学術団体の意義、あり方をもう一度見つめ直し、ニューノーマルな学術活動をいち早く先導することが肝要と思われます。

 本学会(法人)の定款には、「食品科学工学に関する研究の発表、連絡、連携及び促進をはかり、あわせて研究成果の普及、情報の提供を行い、もって科学、技術、文化の発展と国民の食生活の向上に寄与することを目的とする」ことが明記され、まさしくこの事業達成のための活動がなされてきました。さらに、入会案内には、「企業、大学及び国公立試験研究機関の研究者、技術者等の連携を通じて、食品科学工学の向上を図ることを目的に、学会誌の発行、年次大会、講演会、研究会の開催及び学会賞の授与等、各種の事業を行っております」とあります。翻って、コロナ禍による第67回大会(令和2年)の中止、続いての2年間(第68回および第69回大会)はオンライン(第68回大会は一部対面形式でのハイブリッド)開催を余儀なくされています。したがいまして、この3年間は会員相互の全面的な対面交流が途絶えている状況にあり、学術団体としての一部の使命が全うできていない状況にあります。

 会員間の連携手段のためのリモートシステムの活用は、時空間を超えることができるまさしくニューノーマルな学術活動のひとつといえます。他方、会員としての普遍性は、食品科学工学を共通言語として双方向で語り、新たなネットワークを構築できることにあると思います。知識の獲得はリモートシステムで、知恵・術の獲得は対面システムで、を基本スタンスとした新たな学術活動スタイルを模索していくことも必要かもしれません。

 本学会の強みは、産学官の一体的な連携交流を施行でき、変遷する食課題を複眼的視野で議論し、解決する場を提供できることにあります。その一方で、コロナ禍による食品サービスシステムの激変、地球温暖化、環境汚染、少子化・超高齢化社会の到来などによって新たな課題が顕在化しつつあり、本学会が果たす役割や本学会に対する要望も変化していくのではと思われます。したがって、直近だけでなく本学会創立100周年を見据えた学術活動ビジョンを設定することもまた必要ではと考えます。

 食はヒトを豊かに、心身の健康と生命(いのち)を繋ぐものです。だからこそ、本学会が果たす使命は重要であり、次世代へと食科学を繋ぐため、皆様のご支援とご協力を切にお願い申し上げ、就任の挨拶とさせていただきます。